兵庫県立大学大学院理学研究科 物質科学専攻 物質構造制御学部門
理学部 物質科学科
構造物性学講座

Exploring New Frontiers of Functional Coordination Chemistry
from Molecules to Supramolecular Ensemble

分子のレドックス特性を生かした機能物質の開拓

[7] 新しい混合原子価化合物の開発

ある化合物の中で、異なる酸化数が同居する様を、混合原子価状態と呼びます。例えば、生体系の鉄硫黄タンパク質は、Fe(II)Fe(III)状態を取ります。合成顔料のプルシアンブルーは、北斎やゴッホの絵にも使われていることで有名ですが、その印象的な青色は、Fe(II)からFe(III)への原子価間電荷移動 (IVCT) が関わっています。私たちは、適切なレドックス部位と架橋部位を選択することで、IVCTを近赤外領域まで広げ、光ファイバーで用いられている3つの通信波長(850、1300、1550 nm)の光を選択的に吸収するパラジウム二核錯体のシリーズを開発しました(下図左)。また、刺激応答性や超分子組織化部位を導入した新しい混合原価化合物を開発しており、特に、分子型量子セルオートマトンへの応用可能性を検討しています(下図右)。

[8] 金属錯体を利用した有機デバイスの開発

レドックス活性な金属錯体のコーティング剤を開発し、絶縁膜表面を溶液プロセスで簡便に被覆し、分子一層の超薄膜(自己組織化単分子膜)を作製しています。この超薄膜を足場とすることで、有機半導体の薄膜を蒸着させた有機トランジスタを作製できます。絶縁膜と有機半導体が接する界面は、電荷が輸送される重要な領域であり、両部材への親和性を兼ね備えた金属錯体を導入する本アプローチは、界面の構造や機能を制御する有力な手法になると期待されます。これまでにフェロセンが電荷捕獲層として働くことを見出しており(下図左)、不揮発性メモリへの応用展開が期待されます。また、超薄膜と有機半導体層で共通の共役骨格を用いたときの噛み合わせ効果も報告しています(下図右)。

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