マイクロCTによる細胞レベルでの種子内部構造の解析

 種子は乾燥していて休眠状態にあり、吸水すると、その中の胚は生命活動を再開して発芽します。その過程に起こる種子中での構造変化を観察する時に、種皮が種子の周りを覆っており、支障となっています。しかし、X線CT技術を用いれば、固定や切片作製をしなくても種子内部構造を観察可能です。
 我々は大型放射光施設 SPring-8のBL20B2およびBL20XUでX線CT撮影を行い、細胞の並びと細胞間隙の発達を調べています。我々の使用しているX線CTは、マイクロCTと呼ばれている方法で、マイクロメートルレベルでの解析が可能になっています。
 現在、富山大学、奈良女子大学などと共同で、シロイヌナズナの種子の細胞の配置を解析する細胞幾何(cell geometry)の研究を開始しています。

ミヤコグサ種子の横断面画像 シロイヌナズナ種子内細胞の3Dイメージ
 図1の説明:ミヤコグサの種子のマイクロCT画像。薄暗い血管の様に見えるのが子葉の葉脈。白い点状の物はシュウ酸カルシウムの結晶で、3D観察することでこの結晶は葉脈の背軸側に沿って分布しており、発芽しても残っていることが分かりました(Yamauchi et al. 2013)。また、発芽過程の子葉内の細胞間隙の発達過程も追跡できます。  図2の説明:マイクロレベルの3Dイメージング。左図はシロイヌナズナ種子とそのマイクロCT像。マイクロCT像は中央縦断面を示す。左上は実体顕微鏡像。右上図は左図の拡大部分。細胞の境界を緑色で示す。右下図はこのCT像から抽出した細胞モデル。Yamauchi et. al. (2012)より。



公立大学法人兵庫県立大学 大学院生命理学研究科