蛋白質の機能を化学反応として捉えることを可能にする生命現象研究 ピコバイオロジー:原子レベルの生命科学

「ピコバイオロジー:原子レベルの生命科学」は、平成19年度生命科学分野の13拠点のうちのひとつに採択されました。

拠点リーダー挨拶

 21世紀COEプログラムにつづいて、グローバルCOEプログラムに兵庫県立大学大学院生命理学研究科を中心とした拠点形成計画が採択されました。グローバルCOE委員会の期待に応えるべくこれまで以上に拠点形成事業にご協力とご支援を賜りますよう、拠点形成事業推進担当者をはじめとして大学および県当局にお願い申し上げます。

拠点形成計画の具体的な内容は次ページ以後でご紹介致します。ここでは事業推進の基本方針について御説明申し上げます。
拠点リーダー 吉川 信也教授
 グローバルCOEの目標は「国際的に魅力ある大学院教育の構築」を通じた「国際競争力のある大學作り」です。21世紀COEプログラムの目標に較べて教育(人材育成)に重点が置かれているように感じられるかもしれません。しかし、国際的に魅力ある研究が推進されていない大学で「国際的に魅力ある大学院の構築」は不可能でしょう。申すまでもなく、真に国際的に魅力ある(独創的な)研究業績を挙げるためには、長期間にわたる地道な努力が必要です。このような研究の対極にある「追いつけ追い越せ」型の研究では、海外の研究グループが開発した方法や考え方を素早く取り入れて、人力と研究費にものを言わせて論文を量産しなければなりません。このためには即戦力が必須ですから、気の長い人材育成の余裕はあり得ません。かくして、「グローバルCOE委員長就任挨拶」で厳しく批判されています「研究重視、教育軽視」の蔓延を助長することになります。このような研究グループから、国際的に魅力ある研究成果が生まれる可能性はまずありません。「教えることは学ぶことである。」と言われますように、真の教育は研究者を確実に成長させます。上述の長期間にわたる地道な努力にはこのような人材育成の努力も含まれていなければなりません。したがって、教育を軽視して国際的に魅力ある(独創的な)研究が推進される拠点の形成は不可能であると言えます。教育改革の効果はすぐには目に見えないため、特に予算措置が必要になるような改革はどうしても先送りになりがちです。グローバルCOEに採択されたことは、このような教育改革の得難い機会と捉えて、拠点形成推進担当者一同積極的に取り組む所存です。

 「国際的に魅力ある研究」とは流行を追うような研究ではないことは明らかです。しかし、その研究が流行していないのは学術的重要性が低いためであるのか、実現が極めて困難であると推定されるためであるのかを見極める必要があります。後者であっても実現のための説得力のある方策が提示されていなければ前者と同様独善的研究と見なさざるを得ません。このような研究から画期的な発見がもたらされる可能性は皆無ではありませんが、国家予算により運営されるグローバルCOEプログラムとして推進するためには説明責任を果たす必要があります。ある外国人研究者が「研究の優劣は、応用分野との遠近とは無関係である。」といっていました。研究の重要性として応用の可能性しかあげられないようなことでは基礎科学である生命科学の国際的に魅力ある研究とすることは困難でしょう。当拠点では若手研究者発表会や毎年度末の成果発表会等を利用して、大学院教育に加えて、できる限り研究評価にも重点を置く予定です。