すべての生命現象は、蛋白質によって駆動される化学反応である。したがって生命現象の機構を解明するためには、まず研究対象の生命現象を詳細に解析し、さらにそれを駆動する蛋白質を同定、単離し(細胞生物学)、次に単離された個々の蛋白質について、その機能中心の構造を、X線構造解析法と振動分光法によってピコメートル(0.01Å)レベルの精度で決定する。これによって、機能中心を構成する官能基について、個々の原子の空間配置と化学的性質が明らかになり、蛋白質の機能を化学反応として理解することができる(構造生物学)。このように、生命現象という化学反応を原子レベルで捉えることを目指す研究を、ピコバイオロジーと命名する。
細胞生物学は分子生物学的・生化学的方法により、構造生物学は上述のようにX線構造解析法と振動分光法により、推進される。それらは研究方法に大きな違いがあるため、通常は別々の研究グループによって行われるが、本来は緊密に連携して推進されるべきものである。この連携を実現するためには、一方の分野の専門家が、他方の分野における研究の本質をよく理解していることが不可欠であり、そのような能力をもつ人材の育成を本拠点形成の最大の目標とする。
世界的な研究を推進することができる若手研究者の育成策として、世界的な研究を実践させること以上のものはあり得ない。そこで、世界を先導するピコバイオロジー研究を推進しつつ、それに若手研究者を主体的に参画させることを、当拠点の人材育成計画における最重点方策と位置づける。
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