兵庫県立大学 大学院理学研究科 量子物性学分野

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研究内容

我々は、環境変数(圧力、温度、磁場)と放射光X線を積極的に活用し、超伝導や磁性など固体電子論の難問を解明するための最も中心的な課題である電子相関の強い物質の研究を行なっています。

はじめに

我々の身近にある物質は、大きく金属と絶縁体とに分けられます。金属では、一部の電子が物質中を比較的自由に動き回り、電気的・光学的性質をこの遍歴的な電子が主に決めています。一方、絶縁体では物質中を自由に動き回れる電子は存在しません、すなわち、電子は局在化していることになります。物質中では高密度の電子が、クーロン反発力により互いに強く相互作用しながら周期ポテンシャルの中を運動していることで、この性質の違いが生じます。電子間のクーロン反発力により、お互いに関係しながら運動していることを電子相関と呼びます。電子相関は物質の磁気的な性質とも密接に関係しています。

一部の物質では、環境を変えることで金属から絶縁体、絶縁体から金属へと変化します。この金属-絶縁体転移にも、電子相関が強く関わっています。この相転移を研究することが固体電子論の中心課題である電子相関を研究することに繋がると考えているので、我々は圧力などの環境変数を積極的に使っています。また、特別な環境下での物質の性質を微視的な立場で測定するために放射光X線の特徴を利用しています。

研究手法

上に述べた研究を進めるには物質の環境変数を積極的に変えることが重要です。圧力を加えるためには、ダイアモンド・アンビル・セル (DAC) を用いて、温度(最低1.5 K)と磁場(最高8 T)を自由に変えることが出来る環境を SPring-8やKEK PF-ARなどに実現しています。また、電子相関が強く関与する物質の研究を行うためには、純良な試料での測定が不可欠です。現在、フラックス法などを用いた単結晶試料育成も行なっています。

高圧力下の測定では、試料空間が制限されるため高輝度・指向性に特徴のある放射光X線を用いて、原子核をプローブとする核共鳴散乱法というミクロスコピックな実験手法を主要な手段として研究を行なっています。原子核の磁気モーメントは適度に電子系と相互作用しているため、核共鳴前方散乱法では電子系を乱すことなくミクロな立場から電子状態について有益な情報を得ることができます。一方、核共鳴非弾性散乱法を用いることで特定元素の格子振動(フォノン)状態密度の情報を得ることもできます。

放射光X線の偏向特性を利用した磁気コンプン散乱法という実験手法を用いた研究も行なっています。磁気コンプトン散乱法からは、磁性を担っている電子やそれに関連する電子の運動量空間での分布を求めることが出来ます。

研究テーマ

など

学際的な研究

高圧力環境下での電子状態や格子振動の情報を得る実験手法は、固体物理の研究だけでなく地球科学の分野でも重要な手法となります。 我々は、地球科学の研究者とも積極的に共同研究を行なっています。

学部生のあなたへ 「研究」をもっと身近に

量子物性学講座ではどんな研究をしているかを紹介させて頂きました。 専門的な内容になっているため、これから学んでいく学部生にとっては難しい所があったと思います。 そこで専門語句の解説ページを作りました。 研究内容が分かりやすく、少しでも身近に感じてもらえればと思います。