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兵庫県立大学 ピコバイオロジー研究所

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研究成果1

プロトンが蓄積されるプールを同定


 要旨:酸化型1.5Å、還元型1.6Åの構造解析によって、能動輸送されるプロトンが蓄積されるプールを同定し、そこへプロトンが蓄積される仕組みを明らかにした。


 CcOは酸素を水に還元することによってエネルギーを獲得する呼吸酵素である。酸素還元の反応サイクルでH-パスと呼ばれる経路を介して4プロトンが能動輸送される。このH-パスのマトリックス側(N側)は複数の水を含むことのできる幾つかの空洞などで構成されていて、水チャネル(図1の矢印の青色部分)と呼ぶ。一方膜間腔側(P側)は水素結合ネットワーク(図1の矢印の赤色部分)と呼ぶ。

 これまでの種々の反応中間体類似物の構造から、水チャネルはヘムa3が還元状態でかつ酸素などリガンドがないR状態の時のみ開いていることが分かっている。すなわちR状態でのみN側からプロトンを通すことができる。一方、酸素分子がヘムa3のところで順次還元される際に、1電子ずつ4回CuAからヘムaを介してヘムa3に移動する。それに同期してプロトンがP側に能動輸送される。その間、水チャネルは閉じた構造のままになっていてプロトンの逆流を止めている。従って、R状態で4プロトンを蓄積するプールが必要になる。

 酸化型1.5Å、還元型1.6Åの高分解能構造解析を行ったところ、プロトンプールの存在と水チャネルの開閉機構を明らかにすることができた。図1の水色で塗られた部分をMg含有水クラスターと呼び、Mgとその周辺に20カ所以上ある水及び親水性アミノ酸残基で構成されている。ここに4プロトンを蓄積すると考えている。水チャネルの開閉は、ヘムa3へ配位子が結合することによってヘムa3がスライドして、そのビニル基がヘリックスXと近接して、その構造変化を誘起することによって制御される。

論文:Yano N, Muramoto K, Shimada A, Takemura S, Baba J, Fujisawa H, Mochizuki M, Shinzawa-Itoh K, Yamashita E, Tsukihara T, Yoshikawa S., The Mg2+-containing Water Cluster of Mammalian Cytochrome c Oxidase Collects Four Pumping Proton Equivalents in Each Catalytic Cycle., J. B. C., 291, 23882-23894, 2016 (10.1074/jbc.M115.711770).






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