ウラン(U)系化合物の研究

 ウラン(U)原子は物質中では一般に5f電子を2個(U4+)から3個(U3+)有していると考えられます。これら(複数個の)5f電子が伝導電子と相関を持ちながら独特な物性を示します。たとえば、UPd2Al3は14.5K以下では反強磁性体ですが、さらに低温の2K以下では超伝導が出現し、一見相反すると思われる二つの性質(*)が共存します。また、URu2Si2はTo=17.5Kで正体不明の相転移(†)を示し、さらに1.5K以下では超伝導を示します。私たちはこれらの物質のNMRやNQR測定(‡)を行い、超伝導や常伝導状態の電子状態、また相転移に関する有力な情報を得てきました。

Reference:
Phys. Rev. Lett. 87 087203 (2001) ( URu2Si2)
Phys. Rev. B 55 15223 (1997) (UPd2Al3)
など

(*) 通常、超伝導体を強い磁場中に置くと超伝導が壊れますが、これは磁場が超伝導のCooper対を壊すためです。従って、物質内部に磁場が発生する磁気秩序状態と超伝導は相性が悪いと考えられます。

(†) 相転移が生じるということは相転移温度以下では何らかの系の自由度が低下し(エントロピーが減少)、比熱に異常が現れます。正体不明の相転移とは、相転移が生じていることは間違いない(相転移温度Toで比熱に明確な異常があわれる)にもかかわらず、どのような相転移なのかが分かっていない、という意味です。

(‡) NMR:核磁気共鳴、NQR:核四重極共鳴の略。「NMRとは」参照。


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