一次元有機導体(TMTSF)2Xの研究

 (TMTSF)2PF6は低次元有機導体において初めて超伝導が発見された物質です。X= PF6 を含む(TMTSF)2X(Xは他にAsF6,SbF6,ClO4,ReO4など。TMTSFはtetra-methyl-tetra-selena-fulvalenceの略)は、その結晶構造に由来して一次元性の強い電気伝導を示す物質群です。また、有機導体は一般に結晶が柔らかく圧力をかけることによって基底状態が様々に変化しますが、(TMTSF)2X系でも磁気秩序相(電荷密度波)、超伝導相、通常金属相などが圧力をパラメタとして出現します。強相関電子系の超伝導は、p、d、f電子系に共通して磁気秩序相近傍に表れるという点は非常に面白いところです。多くの(TMTSF)2Xは常圧或いは高圧下において超伝導を示しますが、現在においてもその超伝導発現のメカニズムは良く分かっていません。そこで私たちは、この物質中で最も電気伝導性に重要な役割を果たしていると考えられるSe元素についてNMR測定を行い、電子状態の解明を行っています。


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