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NMRの原理

 
通常私たちが観測する物性の大半の原因となっている電子(*)が、ミクロな磁石の性質(スピン)を持っていることはよく知られています。
 実は、原子の中心にある原子核にも同様にスピンを持っているものが多くあります(†)。
原子核のミクロな磁石の大きさ(磁気モーメント)は、一般に電子のものに比べて約1/1000ですが、両者の間には相互作用がはたらきます。
 簡単のために、原子核のスピン量子数が電子と同じ 1/2 のときを考えましょう。
物質に磁場をかけると、磁気モーメントと磁場の間にはたらくゼーマン相互作用によって、核スピンは図のように 1/2h と -1/2h とで異なるエネルギー状態になります。 その差に等しいエネルギーを持つ電磁波を照射すると、二つの準位間に遷移を起こす(共鳴を起こす)ことができます。

(*) 原子核のスピンも磁性を示しますが、核磁気モーメントの大きさは電子の磁気モーメントの1/1000程度の大きさですので、核磁性が現れるのは一般にミリケルビンのオーダーにおいてです。
(†) 7割以上の元素が核スピンを有しています。

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Yb,Sm系化合物の研究


 イッテルビウム(Yb)は、ランタノイド元素の中では最後から2番目に現れる元素です。4f電子軌道は14個の電子を収納できますが、Ybの状態では4f電子の数は13個です。
 従って、この電子状態(4f13)はホールを1つ有した状態とみなすことができ、Ce3+の4f1状態と対比させることができます。たとえば、Yb系化合物に圧力をかけたときの効果がCe系の場合とは鏡に写したときのように反対になるなどの面白さがあり、一方で最近では超伝導も報告されています。
私たちは、磁気秩序相の非常に近傍にあると考えられているYbCu5やYbCo2Zn20などについてNMRやNQR測定を行っています。
 また、同様に4f多電子状態にありながら結晶場(*)を考慮することによって4f1ホール状態と考えることができるサマリウム(Sm)系化合物についても研究を行っています。

電磁物性学講座

兵庫県立大学 理学部物質科学科