Earth-Science Laboratory, University of Hyogo 本文へジャンプ

 
研究テーマ

地球!地震!資源!環境!鉱物!地下探査!
 

 
地球を"知る"ということ

 
 地球環境の変動は、私達を含む地球の生命に大きな影響を与えます。その変動の様相、特に地球表層や地球内部の変動の様子は、最新の科学技術でまさに解明されつつあります。例えば地震・火山噴火等の「諸現象」をリアルタイムで追いかけたり、地下構造・地層・岩石・鉱物といった様々な時空間スケールの「痕跡」を調査することで、地球変動の過程を解明することができます。

 本研究室では地圏(岩石圏)でおきる短期・長期の地球変動現象の理解を目指して、地球物理学・岩石学・結晶学など多様な手法による研究を実施しています。室内での測定・実験・観察に加えて、陸上・海洋調査やコンピュータ・シミュレーションも行っています。
 
■ 当研究室所属学生・教員による研究成果(2019年度~) 
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活断層や活火山の地下構造調査


■ 熊本地震を引き起こした活断層(布田川断層)の地下構造調査
 活断層がずれ動くと、大きな地震が引き起こされます。地表での地形調査や地質調査によって、日本列島の内陸地域には2000を超える活断層があることが分かっています。しかし地下には多数の「未知の活断層」が埋もれています。
   地下の活断層の分布は、電磁探査によって調査が可能です。活断層周辺には、断層運動によって岩盤が細かく砕かれた「断層破砕帯」が形成されています。断層破砕帯には地下水が浸透している(+断層運動により粘土化が進んでいる)ので、活断層周辺は電気を流しやすい地質構造(低比抵抗体)になっています。このため、地表で電磁探査を実施して地下比抵抗構造を明らかにすることで、非破壊(穴を掘らずに)で地下の活断層の位置や規模を推定することができるのです。
 一例として、2016年熊本地震時に明瞭な地表地震断層が現れた布田川断層において実施した電磁探査の結果を示します(下図)。得られた電磁場データを用いて、2次元比抵抗構造Inversionを適用して、断層を横切る断面で地下比抵抗構造を明らかにしました。可視化された地下構造では、地表地震断層の直下付近で、比抵抗値が最も小さくなることが分かりました。これは布田川断層の強破砕域を示すと考えられます。
  
布田川断層周辺の地下比抵抗構造(山下, 2020)。
オレンジの三角形は電磁探査の実施地点。赤色は地表での布田川断層
(地表地震断層)の位置を示す。水平距離0km(布田川断層直下)の
深さ0.4km(地表から約500m下)に比抵抗が低く、電気を通しやすい
「断層破砕帯」があることが明らかになった。
 
海底での電気・電磁気探査

■ 新たな金属資源「海底熱水鉱床」の海底下分布の解明
 昨今の世界的な経済成長に伴って、金属資源の減耗・枯渇が懸念される中、海域の金属資源に注目が集まっています。特に、海底火山の近くで形成される「海底熱水鉱床」は鉱石の品位が高く、次世代の金属資源として期待されています。
 しかし、海底熱水鉱床は深海の海底下に分布するため、鉱床の地下での分布・形状は詳しくは解明されておらず、海底熱水鉱床の形成メカニズムも不透明でした。そこで、海中に微弱な電流を流して非破壊で地下断面図を作成する「海底電気探査」に注目しました。金属鉱床は通常の岩石よりも電気を通しやすい声質を持つため、海底電気探査を行えば、海底下の鉱床分布が可能になるはずです。当研究室では、国内の他の大学・研究機関と協力して、国内の技術で海底電気探査装置を独自に開発しました。
  海底熱水噴出孔(しんかい6500で撮影)
 そして実際に沖縄沖海底熱水地域の海底探査を行ったところ、、、、
1) 「電気をよく通す岩の層」が熱水噴出孔周辺の海底面に分布すること
2) 「電気を非常によく通す別の岩の層」が海底下40m付近にも存在すること
などが明らかになりました。本海域で採取した岩石試料の分析結果から、これらの岩層は金属資源を多く含んでおり、海底熱水鉱床だと考えられます。「海底熱水鉱床の二階建て構造」が詳細に可視化されたのは、世界初の快挙です。さらに詳しい情報については、兵庫県立大学のプレス発表を御覧ください。

海底電気探査の概念図。海底付近で電流を流して、
海底下の地層の様子を可視化する技術である。
 


上:沖縄沖海底で得られた断面図。
下:断面図と岩石物性測定結果などに基づいた、熱水地域の模式図
 
岩石や鉱物の分析と地球進化の理解
■ 微小領域回折法による鉱物分析
 カリ長石(化学組成:KAlSi3O8)の結晶の「三斜度」は、岩体の熱的・構造的な歴史を反映しています。単斜晶系の結晶は高温で安定である一方、三斜晶系の結晶は低温安定であることが知られています。従って、火成岩中のカリ長石を分析することで、岩体(マグマだまり)の冷却時に生じる鉱物の「生成温度」の違い等を推測することが可能です。
   
   
上:K-feldspar薄片試料の顕微鏡写真
下:その拡大図。青点:透明な部分、黄点:曇った部分
 
 まず試料の一部を粉末状にし、粉末X線回折法を用いて、三斜度の解析を実施しました。その結果、三斜晶系の結晶と単斜晶系の結晶が混在していることが分かりました。すなわち、同じ岩石試料の中で、冷却の様子が一様ではないことが示唆されました。
 次に、薄片試料の各部分毎に、微小領域回折法で解析を実施しました。その結果、透明な部分(主に結晶内部を占める:上図の青点)は単斜晶系を示しましたが、曇った部分(周辺部やヘキ開に沿って分布:上図の黄点)は三斜晶系を示すことが明らかとなりました。
 これは直感とは異なる結果です。通常、高温の物質が冷える際には、周辺部で急冷が起き、中心部はゆっくりと冷えます。ところが本研究では、結晶の周辺部はゆっくりと冷えて結晶化しているのに、結晶内部は高温状態から急に冷えたらしい、という一見奇妙な冷却過程が推測されたのです。とても不思議ですね。なぜ、どのような過程を経れば、この分析結果を説明できるのでしょう?
 結晶成長の謎を解くことは、火成岩体の形成の様子を知ることに繋がります。小さな結晶の分析から、大きな地球の謎を解き明かす研究を当研究室では推進しています。
 
 
当研究室所属学生・教員による研究成果

■ 卒業研究論文・修士論文 

■ 学会・シンポジウムでの発表、学術論文誌の掲載など 

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