地球環境の変動は、私達を含む地球の生命に大きな影響を与えます。その変動の様相、特に地球表層や地球内部の変動の様子は、最新の科学技術でまさに解明されつつあります。例えば地震・火山噴火等の「諸現象」をリアルタイムで追いかけたり、地下構造・地層・岩石・鉱物といった様々な時空間スケールの「痕跡」を調査することで、地球変動の過程を解明することができます。 本研究室では地圏(岩石圏)でおきる短期・長期の地球変動現象の理解を目指して、地球物理学・岩石学・結晶学など多様な手法による研究を実施しています。室内での測定・実験・観察に加えて、陸上・海洋調査やコンピュータ・シミュレーションも行っています。 当研究室所属学生・教員による研究成果(2019年度~) 企業向けページはこちら
熊本地震を引き起こした活断層(布田川断層)の地下構造調査 活断層がずれ動くと、大きな地震が引き起こされます。地表での地形調査や地質調査によって、日本列島の内陸地域には2000を超える活断層があることが分かっています。しかし地下には多数の「未知の活断層」が埋もれています。
新たな金属資源「海底熱水鉱床」の海底下分布の解明 昨今の世界的な経済成長に伴って、金属資源の減耗・枯渇が懸念される中、海域の金属資源に注目が集まっています。特に、海底火山の近くで形成される「海底熱水鉱床」は鉱石の品位が高く、次世代の金属資源として期待されています。
1) 「電気をよく通す岩の層」が熱水噴出孔周辺の海底面に分布すること 2) 「電気を非常によく通す別の岩の層」が海底下40m付近にも存在すること などが明らかになりました。本海域で採取した岩石試料の分析結果から、これらの岩層は金属資源を多く含んでおり、海底熱水鉱床だと考えられます。「海底熱水鉱床の二階建て構造」が詳細に可視化されたのは、世界初の快挙です。さらに詳しい情報については、兵庫県立大学のプレス発表を御覧ください。
カリ長石(化学組成:KAlSi3O8)の結晶の「三斜度」は、岩体の熱的・構造的な歴史を反映しています。単斜晶系の結晶は高温で安定である一方、三斜晶系の結晶は低温安定であることが知られています。従って、火成岩中のカリ長石を分析することで、岩体(マグマだまり)の冷却時に生じる鉱物の「生成温度」の違い等を推測することが可能です。
次に、薄片試料の各部分毎に、微小領域回折法で解析を実施しました。その結果、透明な部分(主に結晶内部を占める:上図の青点)は単斜晶系を示しましたが、曇った部分(周辺部やヘキ開に沿って分布:上図の黄点)は三斜晶系を示すことが明らかとなりました。 これは直感とは異なる結果です。通常、高温の物質が冷える際には、周辺部で急冷が起き、中心部はゆっくりと冷えます。ところが本研究では、結晶の周辺部はゆっくりと冷えて結晶化しているのに、結晶内部は高温状態から急に冷えたらしい、という一見奇妙な冷却過程が推測されたのです。とても不思議ですね。なぜ、どのような過程を経れば、この分析結果を説明できるのでしょう? 結晶成長の謎を解くことは、火成岩体の形成の様子を知ることに繋がります。小さな結晶の分析から、大きな地球の謎を解き明かす研究を当研究室では推進しています。
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Earth-Science Laboratory, Graduate School of Science, University of Hyogo |