研究テーマ

4. MOCVDによる薄膜結晶の成長機構に関する研究

 MOCVD法(有機金属化学気相成長法)は高品質な薄膜成長が可能なことから工業的に広く用いられている。特に光通信・高速素子としての応用が期待されているInP系化合物半導体においてはPの蒸気圧が高いため、真空中での成長プロセスが難しいことからMOCVD法以外の手法はほとんどないと言っても過言ではない。しかしながらさらなるデバイス特性の向上を考えた場合原子レベルでの成長機構の解明・制御を行う必要があるが、電子線を用いる解析手法は気相成長中では適用できずその詳細は明確ではなかった。そこで本研究では透過率の高いX線を用い、気相中成長において表面構造・形状評価の動的観察を行い、物性評価および原子レベルでの成長機構の解明を目指すとともに薄膜結晶の高品質化、高性能素子の開発・製造に貢献する。
 現在までに我々はMOCVD成長装置とX線回折計を組み合わせた気相成長用X線回折装置を作製するとともにSPring-8兵庫県ビームライン(BL24XU)に設置した本装置を用い、微小角入射X線回折による成長雰囲気中でのInP表面構造の決定、X線反射率を用いたナノメータレベルでの表面形状変化の動的観察に成功した。また結晶成長中におけるロッキングカーブのreal time測定を実現することにより、従来ex situのみで可能であったヘテロ構造の評価をin situで行うことを可能にした。
※この研究は兵庫県立大学とNTT物性科学基礎研究所の川村朋晃氏、渡辺義夫氏との共同研究である。