擬一次元反強磁性体の秩序
(次元クロスオーバー)


一次元反強磁性体についてのハルデン予想(Haldane conjecture, 1983年)によると、半奇数スピン反強磁性鎖は絶対零度がちょうど臨界点となって励起スペクトルがギャップレスなのに対し、整数スピンでは基底状態が巨視的なシングレットを形成して励起スペクトルにギャップ(Haldane gap)が開き、絶対零度ですら有限の相関距離を持つ。一方、現実の磁性体は、理想的な一次元系ではなく、三次元的な鎖間相互作用を持つ擬一次元系である。それでは、この弱い鎖間相互作用は、ハルデン予想に対してどのような効果をもたらすのか?
 鎖間の相互作用を平均場近似で扱い、鎖内の相互作用を数値的厳密対角化で解析した結果、半奇数スピン鎖の代表であるスピン1/2鎖では、無限小の鎖間相互作用で秩序化するのに対し、整数スピン鎖の代表であるスピン1鎖では、鎖間の結合がある臨界値に達するまでは秩序化しないことが示された。つまり、有限の鎖間相互作用がはたらく
三次元系でもHaldane gapは存在するのである。