講義要目(担当本間健二)


  1. 物理化学II (物質科学科・専門科目/2単位・2年後期)

    ねらい
     水は1気圧のもとでは、0℃以下では氷になり、100℃以上で水蒸気になる。しかし、海の水は0℃でも凍ることはない。一方、高い山の上では水は100℃以下でも沸騰をはじめる。また、水とアルコールは一つの容器に入れておくと完全に混ざってしまうが、水と油では2相に分離し、混ざることはない。このような変化は、熱平衡状態へ向かった変化である。様々な系において、どのような熱平衡状態が現れるか、物理化学Iで学んだ熱力学を、開放系へ適用して理解する。

    内容

    1. 物質の分子的描像
    2. 物理化学Iで学んだ熱力学量の分子的理解
    3. ギブスエネルギー
    4. 熱力学的関係式
    5. 化学ポテンシャルと相変化
    6. 純物質の相変化とClausius-Clapeyronの式
    7. 理想気体・理想溶液の化学ポテンシャル
    8. ラウールの法則と液体の混合
    9. 他姓文系の相図とギブスの相律
    10. 希薄溶液の性質
    11. 化学平衡
    12. ル・シャトリエの法則
    13. 化学反応と熱力学

    教科書

      アトキンス「物理化学(上)」 千原秀昭・中村亘男訳 東京化学同人

    参考書

      多くの物理化学の教科書があります。中身を見て、自分に合っているものを使うことを勧めます。
      朝永振一郎「物理学とはなんだろう」(岩波新書85,86)
      平尾公彦・加藤重樹「化学の基礎」(講談社)


  2. 量子化学I (物質科学科・専門科目/2単位・3年前期)

    ねらい
     「原子はどのような構造をしているのか?」「なぜ原子によって性質の違いがあるのか?」「なぜ原子が結合して分子ができるのか?」これらに答えるのは、ミクロな世界の物理=量子力学を原子・分子に適用した量子化学の役割です。本講義では量子化学によって、原子や分子の電子状態、分子の回転・振動運動などを理解することを目指します。 

    内容

    1. シュレディンガー方程式
    2. 一次元の並進運動
    3. 二次元の並進運動
    4. 調和振動子
    5. 剛体回転子と角運動量
    6. 二原子分子の赤外スペクトル
    7. 水素原子
    8. ヘリウム原子(摂動法)
    9. ヘリウム原子(変分法)
    10. 電子スピンと原子構造
    11. 多電子原子
    12. 水素分子(VB法)
    13. 水素分子(MO法)
    14. 二原子分子の電子状態

    教科書

      授業時に、プリントを配布します。 「アトキンス 物理化学(第8版) 東京化学同人」を持っている人は8章〜13章が対応します。

    参考書

      「量子化学−基礎からのアプローチ」 真船文隆、化学同人
      「量子化学(上)」 原田義也、裳華房
      「基礎量子化学」 小尾欣一・渋谷一彦、化学同人
      「化学結合論入門−量子論の基礎から学ぶ」 高塚和夫、東京大学出版会
      「基礎から学ぶ量子化学」 高木秀夫 三共出版
      「量子化学」 大野公一 裳華房


  3. 化学反応論 (物質科学科・専門科目/2単位・4年前期)

    ねらい
     化学反応は、分子同士(広い意味で)が衝突しその中で結合の組み替えの起こる過程と考えられる。従って、大気中で起こっている反応でも、フラスコの中の反応 でもそれらを本質的に理解するためには分子レベルから捉える事が必要である。この講義では、化学反応を微視的に理解するために必要な概念をまとめ、素反応を取り扱う理論および実験の方法について学ぶ。

    内容

    1. 化学反応の速度
      • 化学反応速度の表現
      • 化学反応速度定数の温度依存性
      • 化学反応速度の決定
    2. 複合反応と素反応
    3. 分子の衝突と化学反応
      • 気体分子運動論
      • 分子衝突のダイナミクス
      • 反応の衝突理論
    4. 化学反応ダイナミクス
      • ポテンシャルエネルギー面
      • ポテンシャル面上の反応ダイナミクス
    5. 化学反応の統計理論
      • 遷移状態理論
      • 単分子反応の理論
    6. 凝縮相中の化学反応
      • 拡散律速反応
      • 溶媒効果
      • 電子移動反応
    7. 最近の研究から
      • 反応のモード選択性
      • 遷移状態分光

    教科書

    • 「はじめての化学反応論」 土屋荘次著、岩波書店(2003)

    参考書
    • 「化学動力学」J. I. Steinfeld他著 佐藤 伸訳 東京化学同人(1995)
    • "Molecular Reaction Dynamics and Chemical Reactivity",
      R. D. Levine and R. B. Bernstein, Oxford Univ. Press (1987)


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