・鉄吸収に関わるタンパク質の構造生物学

鉄は我々生命にとって必須の金属元素で、成人の場合、数グラム程度の鉄が体内に存在します。鉄は、複数の酸化状態をとることができるため、タンパク質の活性中心として様々な機能を発現することが可能です。一方で、鉄イオンは反応性が高いので、生体内における鉄の取り扱いは、高度に制御される必要があります。そのため、生体内には、鉄を安全に輸送するシステムや、鉄濃度を感知してタンパク質の発現を制御するシステムが存在します。本研究テーマは、鉄の吸収に関わるタンパク質群の構造解析を通じて、鉄吸収の分子機構を明らかにするのが目的です。

これまでの研究で、鉄吸収に関わるタンパク質が明らかとなってきています。しかし、そのうちの多くは取り扱いが難しく、なかなか構造学的研究が進められていません。下には、鉄吸収に関わるタンパク質で最も構造学的研究が進んでいる鉄貯蔵タンパク質フェリチンのクリスタル模型を示しています。フェリチンは、小さいタンパク質が24個集まって形成される球状のタンパク質で、タンパク質内部が空洞になっています。この空洞部分に、実に数千原子にのぼる鉄を蓄えることが可能です。他のタンパク質についても構造を基に、その機能について議論できるようになることを楽しみにしています。