4.地震 a. 地震の揺れと震源 地震の揺れ 地震動:地震による地面の揺れ 「地震」は地震動を起こす地球内部の現象を指す 揺れの経験 関東地震(1923年9月1日11時58分、M7.9、死者14万人余り) 阿部理学士が震源域のほぼ真上で体験 「最初に縦揺れ。その後の激しい揺れで、 地面に這いつくばって、立つこともできなかった」 地震波の伝播との関係(図:地震波の伝播、P波とS波の波形) 縦揺れと横揺れの存在;P波とS波 震源のごく近くでは、P波とS波が混在 震源からある程度離れた地点で観測 P波やS波の他に、各種の揺れが続くことがある P波やS波が反射や屈折して届く 主な反射面は、地表、マントル・核境界 表面波;P波やS波より振幅が大きいことが多い P波が、振幅が大きいS波や表面波に先行 P波を用いて、もっと大きな揺れのくることを警告 ナウキャスト地震情報 Q. ナウキャスト地震情報は、どう活用できるか?
実体波と表面波(図:表面波) 実体波:地球内部を伝わる波。P波(縦波)とS波(横波) S波の伝播速度は、P波の60%程度の大きさ 表面波:地球の表面に沿って伝わる波 地表付近のみで大きな振動、深さとともに振幅が急減 伝播速度は、S波の90%程度の大きさ 震源が浅いときに、顕著に生ずる 振動のエネルギーが、表面付近に偏るため、減衰が小さく、振幅が大きい 表面波には、レイリー波とラブ波が存在 レイリー波:鉛直方向と伝播方向に振動 ラブ波:伝播方向と垂直な水平方向に振動 深さとともに速度が急増する場所で生じる 下図:G. A. Eiby "Earthquakes"(Heinemann, New Zealand)より
Q. 地震の表面波は水面波とどう違うか? 震度 震度:地震動(地震の揺れ)の大きさを段階で表す 震度計(加速度型地震計、強震計)で測られる計測震度を丸めて10段階で評価 震度は、体感や被害の程度と対応づけられる 震度5弱以上で、建物などに被害 震度6弱以上で、家屋の倒壊が始まる 歴史的には、体感や被害の程度を表現する震度表が最初に作られた 兵庫県南部地震を契機に、気象庁は1996年から震度計を用いることにした 現在、全国に3000箇所以上に震度計が分布 震度データは、地震が起こるとただちに発表 外国では、体感や被害に基づく震度が現在も使われている 定義自体も国により異なる よく使われるのは、改正メルカリ震度 震度の定義と意味 _____________________________________________________________________________________ 震度 計測震度 よく見られる現象 _____________________________________________________________________________________ 0 0-0.5 人は揺れを感じない。 1 0.5-1.5 屋内の一部の人がわずかな揺れを感じる。 2 1.5-2.5 屋内では多くの人が揺れを感じ、眠っている人の一部は目を覚ます。吊 り下げた物がわずかに揺れる。 3 2.5-3.5 屋内のほとんどの人が揺れを感じ、恐怖感を覚える人もいる。棚の食器 類が音を立てることがある。 4 3.5-4.5 屋内ではかなりの恐怖感があり、眠っているほとんどが目を覚ます。 座りの悪い置物が倒れる。 5弱 4.5-5.0 棚の食器類や本が落ち、家具が移動することがある。弱い壁に亀裂が 生じることがある。落石や小さな崖崩れが生じることがある。 5強 5.0-5.5 棚の物が多く落ちる。タンスが倒れることがある。補強されていないブ ロック塀、備え付けの悪い自動販売機、墓石の多くが転倒する。弱い家 屋の破損、耐震性の高い建物に亀裂が生じることがある。 6弱 5.5-6.0 立っていることが難しい。多くの家具が移動、転倒する。弱い住宅は倒 壊するものがあり、鉄筋コンクリート造でも壁や柱に亀裂が生じる。 地割れ、山崩れが生じることがある。 6強 6.0-6.5 立っていることができず、はってしか動けない。家具のほとんどが移動、 転倒する。弱い建物の多くが倒壊し、耐震性の高い建物でも壁や柱が破 壊するものがある。 7 6.5- 人は自分の意志で動けない。ほとんどの家具が大きく移動し、飛ぶもの もある。耐震性の高い建物でも傾いたり、大きく破壊するものがある。 _____________________________________________________________________________________ Q. 震度の決定に震度計を使う利点をあげよ 震度分布の例 鳥取県西部地震;2000年10月6日、マグニチュード7.3(図) 最大震度6強で、7にならなかった;断層が地表まで達しなかったため 死者0人、重軽傷100人程度、2000戸余りの家屋が全半壊 新潟中越地震;2004年10月23日、マグニチュード6.8(図) 断層が地表近くに達したため、最大震度が7になった 死者46人、重軽傷約4800人、3000戸余りの家屋が全壊 下図:気象庁のホームページより
兵庫県南部地震;1995年1月17日、マグニチュード7.2(図) 計測震度を用いる以前の震度;神戸付近で震度6、姫路で震度4 後から調べて、帯状に震度7の分布 死者6400人、重軽傷約4万人、家屋の全壊10万戸、半壊14万戸 下図:気象庁の資料
地震動への地盤の効果 ロマプリータ地震の例(図:地盤による波形の違い) ロマプリータ地震;M7.1、死者67人 地盤の弱い場所で、高速道路が倒壊した 震源から同じような距離でも、揺れ方が大きく異なる 扇状地などの脆弱な地盤は、揺れが増幅される 周辺との地震波速度の違いで、振動エネルギーがトラップされる効果も 液状化現象:水を含んだ砂地を揺らすと液状化(図:液状化現象) 地面から水が噴出して、泥火山ができる 地盤は液になって流れ、強度を失い、建物などが倒壊 液状化の原因 接触によって支えられた砂粒が、揺れによって支えを失う 砂粒は液体の中に埋没して、全体が流動化 下図:E.J.Tarbuck & F.K.Lutgens "Earth"(Prentice Hall)より
震源の位置の計算 地震波速度が一定な場合 P波とS波の到着時刻の差から、観測点と震源の距離を決める 距離 = 時間差×VpVs/(Vp-Vs) 3点以上の観測点からの距離から、震源の位置が決まる 各観測点から、距離を半径とする球を描き、交点を求める 実際に使われる震源決定(地震波速度の分布は既知とする) 複数の観測点でP波、S波の初動時刻を決める 観測結果が計算結果と合うように、地震の発生時刻と発生位置を同時に決める 発生時刻、発生位置の適当な値からスタートして、地震波の到達時刻を計算 計算結果と観測値のずれを減らすように、発生時刻、発生位置を修正 その操作を収束するまで繰り返す 震源の位置は、震央(震源の真上の点)の位置と深さで表現 Q. 震源は地震の原因となる変動が開始した地点を示す。何故か? マグニチュード マグニチュードは、地震の大きさを表現する尺度 震源から地震波として放出されるエネルギーに対応 各々の地震に固有の値で、震度のように場所に依存しない マグニチュードの決め方 標準的な地震計を用いて、地震記録の最大振幅Aを読み取る 振幅は地震によって何桁も変わるので、その常用対数をとる 遠くに離れるほど振幅は小さくなるから、それを補正する、 マグニチュード M = log A −αlog r rは震央距離、αは定数 よく使われるマグニチュード 実体波マグニチュード:周期数秒のS波の振幅を使う 表面波マグニチュード:周期約20秒の表面波の振幅を使う これらのマグニチュードは、巨大地震の大きさをうまく表現できない 断層運動に基づいて決めるモーメント・マグニチュードを使う モーメントは、断層の両側で逆向きに働く「力の対」のこと 地震波として放出されるエネルギー エネルギー E log E = 1.5M + 定数 マグニチュードが1上がると、エネルギーは30倍になる エネルギーはモーメントに比例する Q. 震度とマグニチュードの違いを説明せよ マグニチュードの例 兵庫県南部地震(1995.1.17):7.2(死者6400人) 鳥取県西部地震(2000.10.6):7.3 新潟中越地震(2004.10.23):6.8(死者46人) 関東大地震(1923.9.1):7.9(死者14万人余り) 南海地震(1946.12.21):8.0(死者1500人) チリ地震(1960.5.23):9.5(世界で最大級、死者数千人、日本でも津波で139人) スマトラ島沖地震(2004.12.26):9.3(津波などにより死者30万人) 地震の発生回数(図:地震の頻度とマグニチュード) 地震の頻度(単位時間あたりの発生回数) 地震の発生回数は、地震が大きくなるほど少ない マグニチュードが1上がると、頻度はほぼ1/10に減る マグニチュードと頻度の関係 log N = C − bM log n = c − bM ; c = C + log b N:マグニチュードがM 以上の地震の総数 n:マグニチュードがM −0.5とM +0.5の間にある地震の数 b (b値)はほぼ1に近い数、地震が起こる場所の性質を反映 不均一な場所ほど、bが大きい(小さい地震の数が相対的に多い) 地震が小さくなる程、発生回数が多くなる理由 小さい地震の方が、断層が小さいので、選択しうる場所の数が多い