クライオ電子顕微鏡法
 「クライオ」とは、「低温」または「凍結」という意味で一般的に使用されている。クライオ電子顕微鏡法とは、凍結させた試料を、凍結状態のまま電子顕微鏡で観察することを示す。生物試料は、その60〜70%が水であることから、これを低温にして水を凍らせることにより、試料中のタンパク質や脂質、核酸などの生体分子を氷の中に固定できる(氷包埋という)。凍結試料は、試料ステージを低温(液体窒素温度、または液体ヘリウム温度)にできる電子顕微鏡(クライオ電子顕微鏡という)を用いて観察する。
 試料の凍結を瞬間的に行うこと(急速凍結という)により、生物が生きていた時に非常に近い状態で、組織、細胞、生体分子が凍結固定される。したがって、クライオ電子顕微鏡法は、生体に非常に近い構造を観察することができる手法である。

生物試料の凍結技法
 生物試料の急速凍結法として、液体窒素で冷却した液体エタン中に試料を落下させて凍結させる「浸漬固定法」と、210MPaの高圧下で液体窒素により試料を凍結させる「高圧凍結法」を用いている。試料を凍結させる際に、試料に含まれる水を、非晶質の氷としなければならない。なぜなら、水が結晶性の氷(固体)となった場合には、液体状態と比べて体積が約9%増加する。この水の体積増加により、組織、細胞は破壊され、生きたときに近い構造を観察することはできなくなってしまう。水を非晶質の状態で凍結させるには、水分子が結晶となって成長するより前に、水分子の運動を止めてしまえばよい。そのためには、秒速1万〜2万℃以上で急冷する(急速凍結という)必要がある。
 液体エタンへの浸漬凍結では、試料表面から約100nm程度までが急速凍結されるので、生体分子、特にタンパク質1分子、タンパク質複合体、タンパク質結晶などの、凍結に利用される。細胞、組織の急速凍結には、高圧凍結法が用いられる。動物細胞で50μm、植物細胞では200μmほどの深度まで、非晶質氷として凍結できる。


電子顕微鏡法による生命科学研究
研究テーマ
 (1)ポストシナプスにおける分子シグナリング機構の解析
 (2)培養細胞を用いた神経筋シナプスモデルの確立
 (3)電子顕微鏡で観察できる遺伝的標識法の開発
 (4)タンパク質1分子内動態解析

先端バイオイメージング支援事業
新学術領域研究(研究領域提案型)
学術研究支援基盤形成
http://www.nibb.ac.jp/abis/

・電子顕微鏡支援(クライオEMワークフロー支援)
http://www.nibb.ac.jp/abis/about-support/em/e11

・電子顕微鏡法トレーニング
http://www.nibb.ac.jp/abis/about-support/tr/t03

共同研究

・東北大学、東京大学、京都大学、同志社大学、近畿大学、九州大学の研究室と
 電子顕微鏡法に関わる共同研究
・食品メーカー、化粧品メーカー、医薬品メーカーと
 製品開発・評価に関する共同研究
・自動車メーカーと燃料電池・リチウムイオン電池に関する共同研究

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