5)ラマン分光法を用いた難水溶性気体を基質とする酵素活性測定法の開発

 

ヒドロゲナーゼのように気体を基質とする酵素の反応を測定するには、反応系の気体成分を分析する必要があります。従来、気体成分の分析にはガスクロマトグラフィーや質量分析が用いられます。分析に反応系の気相のサンプリングが不可欠であるため、サンプリング毎に反応系の圧力補正が必要で、また、連続測定が困難でした。これらの問題を解決するために、ラマン分光法を用いた新規の酵素活性測定法の開発を進めています。この手法では、密閉した反応セルの気相部分に励起光を照射し、そこからのラマン散乱光を測定することで気体成分を分析します。このため、反応系を乱すことなく非侵襲で酵素反応を連続測定することが可能です。我々はこの測定装置を使って、ヒドロゲナーゼが触媒する(1) 水素の分解反応、(2) 水素/重水素(H/D)同位体交換反応、(3) para/ortho核スピン異性体変換反応を測定し、詳細な反応機構の解明を目指しています。

ラマンスペクトルの時間変化。ヒドロゲナーゼによって重水素ガスD2H2HDに同位体交換される反応の時間変化を表しています。

 

水素分子の同位体、核スピン異性体混合気体からのラマンスペクトル。小さい図中のoはオルト核スピン、pはパラ核スピンを表しています。