Ca2+/CaM依存性プロテインキナーゼ
AXIN
カドヘリン様神経受容体
他のプロテインキナーゼ






Ca2+/CaM依存性プロテインキナーゼ

   脳におけるカルシウムイオン依存性シグナル伝達に関わる多機能性プロテインキナーゼとして"CaMキナーゼT,U,及びW"が存在することが知られている.さらに近年,CaMキナーゼTとWをリン酸化して活性化するCaMキナーゼキナーゼ(以下,CaMKK)が発見された.カルシウムイオンを介するシグナル伝達系にこのプロテインキナーゼカスケードが重要な役割を果たしている.図-1にCaMキナーゼカスケードを示す.刺激に応答して神経細胞内のカルシウムイオン濃度が上昇し,カルモジュリン(CaM)が活性化される.CaMはCaMキナーゼIIを活性化するとともに,CaMキナーゼキナーゼ(CaMKK)の活性化を介してCaMキナーゼIとCaMキナーゼIVを活性化する.


図-1

   我々は,脳内プロテインキナーゼカスケードの構成要素の一つであるCaMKKαのX線結晶構造解析を目指して,このタンパク質の精製,結晶化を試みている.実験に用いているCaMKKαはラット大脳皮質由来のもので,アミノ酸残基数505,分子量約56kのタンパク質である.本分子はカルモジュリン結合に関与する調節領域と触媒領域から構成されている.カルシウムイオンの結合したカルモジュリンが調節領域に結合することによって活性化され,ATPを使ってCaMキナーゼ・をリン酸化する(図-2).


図-2


図-3 図-4


   CaMKKαは「水溶性タンパク質ではあるが,精製度が上がるとアグリゲートしやすい」という性質を持っており,結晶化するのが困難である.現段階では微結晶は得ているが,結晶構造解析に適した結晶は得られていない.図-3にTween80を添加して精製したCaMKKαの微結晶とその回折像を示す.また図-4にキモトリプシン処理した試料についての結果を示す.本試料は「カルシウムイオン及びカルモジュリンの存在下で自己リン酸化が起こる」ことも確認されている.この性質も結晶化を困難にしている原因のひとつとも考えられている.CaMKKαの良質の結晶を得るために現在我々は以下の戦略で結晶化を試みている.
   1 プロテアーゼで消化した標品の調製
   2 アグリゲートを防ぐための界面活性剤の検討
   3 カルモジュリン-CaMKKα複合体の調製
   4 リン酸化部位を変異させたCaMKKαの調製
   5 モノクローナル抗体の調製と,CaMKKα -抗体複合体の調製

   本研究は滋賀県立成人病センターの藤澤仁研究室との共同研究プロジェクトである.





Axin

   Axinは体節形成,体軸形成,細胞の分化・分裂などを制御するWntシグナル伝達系を構成するタンパク質の一つであり,遺伝子発現を制御する働きを有するβ-cateninの細胞質内濃度を制御するタンパク質として知られている.β-cateninはAxinと直接結合することでGSK-3βキナーゼによるリン酸化を受け,最終的にユビキチン化を経てプロテアソームにより分解される.Axinにはβ-cateninとGSK-3β以外にもadenomatous plolyposis coli遺伝子産物(APC)との複合体を形成し,それぞれAxin上における結合部位はほぼ明らかになっているが複合体としての詳細な機能は不明である.それを解明するためにはAxinの立体構造が必要であり,それをX線結晶構造解析法によって明らかにし,β-cateninの濃度制御機構におけるAxinの働きを解明することを目的とする.
   β-cateninの濃度異常は細胞分化異常を引き起こし,成熟細胞では癌化を引き起こす原因となる.Axinと結合するタンパク質群の異常が β-cateninの濃度異常を引き起こすことで癌化が引き起こされることが示唆されている.Axinの構造解明はそのような細胞の癌化機構を解き明かす手がかりとなる.
   当研究室では最近AxinのC末端にあるDIXドメインの結晶化に成功し,X線構造化学的研究を推し進めている.

   本研究は広島大学医学部の菊池研究室との共同研究である.




カドヘリン様神経受容体


工事中



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